社会福祉法人さぽうと２１　２０１３年度 東日本大震災被災地支援活動報告

釜石の中学校における鼓(つづみ)の講習会の実施

（2013年12月3日に釜石市立大平中学校、12月4日に甲子中学校にて実施、岩手県釜石市）

さぽうと21より被災地支援活動報告がございましたので転記致します。

2013年12月3日及び4日に囃子大倉流大鼓方能楽師で重要無形文化財総合認定保持者の大倉正之助氏と弟子の方々3名を招聘し、岩手県釜石市立大平（おおだいら）中学校、甲子（かっし）中学校にて、鼓の講習会を実施しました。(姉妹団体AAR Japan [難民を助ける会] との協力による。)

 

岩手県釜石市は、東日本大震災により発生した津波の影響で888名の方が亡くなり、未だに152名の方が行方不明の状態です（2013年3月時点）。また、被災家屋は約4,700戸（市全体の3割）に及ぶなど、壊滅的な被害を受けました。

大平中学校は釜石市の高台に、甲子中学校は沿岸部から離れた地域に位置しているため、東日本大震災により発生した津波の直接的な影響は受けませんでしたが、親族を亡くした生徒や、仮設住宅で生活をしている生徒が多く通っています。

学校から離れた地域の仮設住宅に住む生徒は、遠方から1時間近くかけてスクールバスを利用して通学するなど、いまだに震災は子どもたちの生活に大きな影響を及ぼしています。

震災から2年半以上が経過しましたが、このように震災前とは異なる生活環境の中で生徒は様々な思いを抱えて日々を過ごしています。

これまで釜石市内では大きなコンサート会場などはなく、子ども達に生演奏、特に日本の伝統音楽に触れてもらう機会がないとして学校の教員の方々は残念に思っていました。このたび、サンキョー株式会社様のご支援により鼓の演奏を聴き、そして実際に触れる鼓の講習会を実施することができました。

12月3日に実施した大平中学校では、1、2時限目に2年生49名、2、3時限目に1年生54名、4、5時限目に3年生64名が参加しました。続く12月4日は甲子中学校にて2年生51名の合計218名を対象に講習会を実施しました。講習会では、大倉氏が鼓の打ち方だけではなく、礼儀作法や、鼓を打つにあたっての心構えなどを話しました。

子どもたちにこのような貴重な体験をさせることができ、大変うれしく思っております。鼓を打つということを通して、万物への畏敬の念、感謝の心をご指導いただいた大倉先生からは、子どもたちも十分に享受できたと感謝の言葉もいただいています。

鼓の講習会を受けた生徒の感想をいくつかご紹介します。

「大倉先生の話を聞いて、すごいと思った事は、鼓はたくさんの命があってこそ使える道具だと知ったことです。この話を聞き、自分も家族、友達、食べ物などがあって生きていられる、ここに居られると思いすごく共感することができました。（中学校1年生）」

「鼓の演奏をしてみて、私はあまり音が出なかったし、出たとしても変な音しか出なかったので少し心配でしたが、先生のお話を聞いて、上手い下手は関係ないということを教えてもらったのですごく楽しくできました。（中学校1年生）」

「大倉先生に命の大切さや人と人との『縁』というお話をしていただき、とても心にしみました。これから私達は大人になっていきますが、出会っていく一つ一つの縁を大切にして、今を生きられていることに感謝して成長していきたいです。（中学校2年生）」

「今回の講習会では、多くの事を学びました。これからの生活では挨拶をしっかりするなど、初歩的な事はもちろんの事、どんな物や人でも尊敬の念や感謝を忘れずに過ごしていきたいです。（中学校3年生）」

「最後に大倉先生の演奏をききましたが、鼓を打つ一つ一つの音、そして声も迫力に満ちていて圧倒されました。今回の鼓講習会はとても良い経験になりました。ありがとうございました。（中学校3年生）」

＜大平中学校・鼓の講習会風景＞

鼓の組み立て方を説明する大倉正之助氏（左）と弟子の深津紘氏（右）（2013年12月3日）

 

＜大平中学校の鼓の講習会＞　鼓を打つ前の挨拶の礼（2013年12月3日）

 

＜大平中学校の鼓の講習会＞　声と息のタイミングに合わせて鼓を打つ。（2013年12月3日）

 

＜大平中学校の鼓の講習会＞　鼓の打ち方を教える大倉正之助氏（2013年12月3日）

 

＜大平中学校の鼓の講習会＞

大平中学校3年生と大倉正之助氏とお弟子さん3名（2013年12月3日）

 

＜甲子中学校の鼓の講習会＞　甲子中学校2年生と大倉正之助氏とお弟子さん２名。